ネオアジュバント(手術前)化学療法プロトコルについての論争(その2)――

ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン――SWOG8710試験、2003年9月更新

 ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン9月号は、膀胱切除術の後に続くM−VAC療法を伴うネオアジュバント化学療法の使用を調べて、進行中の無作為抽出された第3相臨床試験のSWOG8710の進歩に関する最新情報を出版しました。

 その記事は、出版物及びインターネット医療ニュースサイトにおける見出しを手術前の化学療法が浸潤性膀胱がんの生存率をかなり改善するというものにしました。その記事は、+/−33か月の生存期間の利点が化学療法に与えられたという強い印象を与えます。「併用療法(M−VAC療法+根治的膀胱切除術)が割り当てられた患者たちの中央値の生存期間である77か月に比べて外科手術単独が割り当てられた患者たちの中央値の生存期間は46か月でした。両方の集団において、改善された生存期間は膀胱切除標本の中の残存するがんのないことと関連しました。意味深いことに、併用療法集団の患者で残存するがんのない者は、膀胱切除単独集団の患者のそれより比率が高いものでした(38パーセント対15パーセント)。
 結論
 「根治的膀胱切除術単独と比較すると、根治的膀胱切除術の後に続くネオアジュバントであるメトトレキセート、ビンブラスチン、ドキソルビシン及びシスプラチンの使用は、膀胱切除標本の残存するがんを取り除く可能性を増大させ、局所進行性膀胱がん患者における改善された生存期間と関連します。」
 局所進行性膀胱がんに対する膀胱切除術単独とネオアジュバント化学療法及び膀胱切除術の比較
 Grossman HB, Natale RB, Tangen CM, Speights VO, Vogelzang NJ, Trump DL, deVere White RW, Sarosdy MF, Wood DP Jr, Raghavan D, Crawford ED.M.D. Anderson Cancer Center, Houston, USA.N Engl J Med. 2003 Aug 28;349(9):859-66. Medline abstract

 ランセット(訳注:英国の医学専門誌(週刊)Thomas Wakley が1823 年に創刊)記事

 5年生存の5%の差異:新しい標準治療?

 2003年6月のランセット(第361巻9373号)で報告されたように、ロンドンを本拠地としている進行性膀胱がん転移分析協同研究の研究者たちは、手術前の化学療法が結果に影響を及ぼしていたかどうかにかかわらず、10の臨床試験から統合した結果を発表しました。2,600名を超える患者からデータを調査して、研究者たちは、併用化学療法(単独の薬剤とは対照的に複数の薬剤を使用)が5年生存を5%改善することを発見しました。
 発見
 プラチナベースの併用化学療法は、5年生存の5%改善についての利点を示しました。全体生存は45%から50%までに増大しました。生存におけるこの改善の解釈は、浸潤性膀胱がん患者のためにプラチナベースの併用化学療法の使用を促進します。
 浸潤性膀胱がんにおけるネオアジュバント化学療法:体系的論評及び進行性膀胱がん(ABC)の転移分析協同研究通信:C Vale, Meta-analysis Group, MRC Clinical Trials Unit, 222 Euston Road, London NW1 2DA, UK Medline abstract

ランセットの編集論評

 泌尿器・腫瘍学専門家のウォルターMシュタードラー及びセスPラーナーは、同じ問題のランセットの記事について論評します。したがって、ほぼ20年間の調査後の結論は、局所進性膀胱がん患者のためのネオアジュバント化学療法が治療の標準であることです。しかしながら、勝利宣言は不適当でしょう。潜在的に有毒な化学療法の相対的な利点は、極めて控えめです....実際には5年生存の5%改善が見られるだけですから。
 Walter M Stadler and Seth P Lerner Departments of Medicine and Surgery, Section of Hematology/Oncology and Urology, University of Chicago, IL 60637, USA (WMS); and Scott Department of Urology, Baylor College of Medicine, Houston, Texas, USA

主題に関する別のヨーロッパの意見

 2002年10月に、イタリアからの専門家は、「非無作為抽出試験及び無作為抽出試験からの利用可能なデータは、最終的にネオアジュバント化学療法の正確な役割及び生存へのその影響を立証しませんでした。たとえ、ネオアジュバント化学療法が生存を改善しなくても、予備データは、膀胱温存は選ばれた患者の中で可能であるかもしれず、そのような併用療法がうまくいけばより良い患者の治療技術に至るであろうということを示唆します。手術後の化学療法試験は、小さな標本サイズ、紛らわしい分析及び不確かな結論の報告の結果としての臨床業務におけるアジュバント化学療法の規定通りの使用を裏付ける不十分な証拠を提供します。説得力ある結果を提供するために、新しい大規模で、複数の医療機関にまたがった試験は必須です。膀胱がんの微生物学のより良い理解は、新しい治療のモダリティー(訳注:同種療法において薬剤作用を変える状態)調査に影響するでしょう。分子標的小分子療法及びモノクローナル抗体は、現代の諸研究に著しく影響し始めました。」と述べました。
 局所性及び局所進行性膀胱がん
 Calabro F, Sternberg CN.Department of Medical Oncology, Vincenzo Pansadoro Foundation, Via Aurelia 559, Rome 00165, Italy.Curr Treat Options Oncol. 2002 Oct;3(5):413-28. PMID: 12194806 Medline abstract

 5年で5%改善された生存の利点は、リスク対メリットの明確な説明によって均衡が取られなければなりません。患者の観点から生活の質の問題に関する注意は、ほとんど与えられているようでありません。この時点では選択肢が欠けており、どのような利点でも浸潤性及び転移性膀胱がんの世界では歓迎されます。

 幸運にも、新しい試験計画について協力している専門家と現在立案されている多くの計画があります。
 米国国立がん研究所――腎臓・膀胱がん進行の優先事項の評論グループを御覧ください。

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 出典が示されているもの以外は、ウェンディ・シェリダンが執筆又は編集したものです。
 このページは、2007年9月16日土曜日に最終修正が行われました。
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ネオアジュバント(手術前)化学療法プロトコルについての論争(その1)
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原本:2007.09.15 10:56

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